※R15の描写があります
自己責任でお読みください















見上げると暗灰色の雲が空全体を覆っている。だいぶと冷え込んでいるので、 雪が降るのかもしれない。その空の下、白布は体育の授業でサッカーをしていた。 軽く試合でもしてみるかということで始まったミニゲームはまだ前半が始まったばかりだった。 白布はパスを出したが、そのボールを蹴った足が着地したのは自分をマークしていたDFの足で、 それでも何とか避けようとしたもののうまくいかず、鈍い痛みが足首にはしった。 軽く捻ったかもしれない。大したことはないだろうが、 念のためテーピングをしておくかと思い体育教師にその旨を伝えて保健室に向かった。

「失礼します。」

扉のすりガラスから光がもれていたために誰かいるだろうと思ったが、 その期待も虚しく答えるものは誰もいなかった。しょうがない自分でやるか、 とテーピングを探していると視界の端にベッドの方のカーテンが揺らめくのが見え 「白布くん」とその隙間から小さな手がちょいちょいと手招きしていた。

さん、どうしたんですか?」
「ちょっと貧血気味みたい。」

そう言っては眉尻を下げて笑うが、顔には活気がなかった。 女子って大変だなと思いつつ、白布は手招きに応じてカーテンの中に潜り込んだ。

「白布くんはどうしたの?」
「…あー、軽く捻ったみたいで。」

足首を指差しながら言うと、は、はっとしたような顔をした。言えば大げさに心配するので本当は言いたくなかったが、 言う前からもう心細そうな目をしていた。何もなければ保健室にも来ないものだろうし。

「大丈夫?わたしテーピングするよ!」
「大丈夫です。あとで自分でしますから、さんは寝ててください。」

カーテンで仕切られている空間から慌てて出て行こうとするを白布は引き止めてベッドの端に座らせた。最初こそ納得のいかない顔をしていたものの、 すぐに子どものような笑顔に変わる。さっきまで元気がなかったのに、 自分に会えたからこその笑顔なのだろうか、と自惚れてしまうのは仕方がない。

「ねえ、白布くん。ちょっとだけサボらない?先生、健康教育の授業でこの時間いないんだって。」
「そうなんですか。」

そう言いながらは白布の腕を掴んで自分の隣に座らせ、 そのまま腕を絡ませ少し甘えた声で白布を見上げる。

「ねえ、前に言ってた”キスおあずけされた”ってどういうこと?」

白布は今ここで、しかもこの状況でその話をするのかと思い動揺するも、 は目を爛々と輝かせている。この人はただ純粋な興味で聞いている。 そんな期待を向けられても、今となってはあのときの衝動を思い出すと、 じゃあ起きていたらはどういう反応をするのかという苛虐心が湧いてきて試してみたくなってしまうのに。

「再現してみましょうか?」

はそのときの白布の表情が笑顔だったのに煽情的で、 よからぬ気配を察知して返事ができず目を伏せてしまった。白布はそんな反応は予測できていたが、 返事がないことを肯定と受け取り、ベッドに足をかけ、その華奢な肩を軽く押すと いとも簡単に2人の体はベッドに沈み込んだ。さっきまで寝ていたからか少し乱れている の髪を撫でつけるように梳いてひと束掬い取る。そこに口づけ、 を見ると真っ赤な顔をして白布を見上げていた。

「…な、なにするの…?」
「なにって、話聞きたいんでしょう?」

そう言いながら制服のボタンをひとつ、ふたつ、みっつと外していくと 段々の目が涙ぐんでいるように見えた。

「…どういうこと?」
さんが倒れたとき、こうやって介抱してました。」

つぅーっと鎖骨に指を這わせると、の体は面白いようにびくりと震えた。
は腕をつっぱり潤んだ目で白布を見上げるも、 そんな顔で見られても逆効果なのに馬鹿だなあと思う。男をわかっちゃいない。

「こんな格好見ればキスもしたくなるでしょう?」

驚いたのだろうか、中途半端に赤い唇が開いたままになっている。 うなじを撫でながら髪をかき分け後頭部をつかんで少し強引にそこに口づけると、 くぐもった抗議の声が聞こえた。その声をかき消すように、 自分の舌先を温かいそこへ差し込み逃げようとするの舌に絡ませる。執拗に追い回せば段々との腕の力が抜けていき、酸素を求めて口を開けるので、 さらに深く口内に侵入した。はまともに息ができず、何度も口を離そうともがいたが、 そのたびに後頭部を抑えられ息継ぎを遮られるので抵抗することをあきらめた。 自分が自分でなくなるような気がして必死に白布の服の裾に縋りついた。

「……っ…ふ……」

時折もれる湿った息づかいと水音が無機質な保健室に響いていやらしい。 いやらしくて、は涙が出てくる。白布はの唇から離れるのは勿体ないと思ったが、の透き通るような白い肌を汚してやりたくて首元に顔をうずめ、歯を立てた。

「あっ」

は痛みで顔を歪めたものの、胸元から首すじに舌を這わせ耳朶を唇で挟みこむと ぶるりと体を震わせ眉根を寄せた。痛みと気持ち良さとの瀬戸際でどうにかなってしまいそうだった。 制服のブラウスをスカートから引きずり出して、 するりとすべる滑らかなくびれをなぞるとの全身が粟立つ。するとは慌てて白布の腕とブラウスの裾を掴んだので、 白布は怪訝に思っての揺れる瞳を覗き込んだ。

「…ま、まって…ここ、学校だよ?」
「でも今は2人きりです。」
「…先生、戻ってきちゃう…」
「この時間はいないって言ったのはあなたです。」
「だ、だれかきたら……」
「ちょっと黙ってください。そのだれかに聞かれますよ。」

そう言ってぽかんと開いた口に吸いつくと、すぐにまた甘やかな吐息が吐き出される。 舌先での口内をなぞりながらブラウスをたくし上げて、 下着のホックは外さないままカップだけずり下げてやると形のいいふくらみがそのままに露わになる。 はずっと覆われていたその部分が急に晒されて心許なく思ったが、 すぐに与えられる刺激によってそれも気持ちよさに変わっていった。 さわれば簡単に形を変えるそれをやわやわと揉みしだき、 先端に指をかけると塞がれている口から声にならない声が漏れた。 そんな反応が可愛くてつい笑みをこぼし口を離すと、とろんとした目でこちらを見上げる。 唾液に濡れてひかる口元がなんともそそった。

「……ね、…もうっ、これ以上は…」
「だめですか?」

きゅっと摘むと「……っ、あ……」と我慢できなかった声が出て、直接鼓膜を震わせた。 それが白布には嬉しかった。

「…っ、ゃ、やめ……」
「そしたら、いいかげん名前で呼んでください。呼べたらやめてあげます。」

そう言えば、瞳に涙を携え顔を紅潮させながらいやらしくひかった唇を動かす。 先輩たちのことは名前で呼ぶくせに、 つきあってる自分のことはまだ「白布くん」だなんてくやしいだろ。

「…け、…けんじ…ろ……」

我ながらずるいと思う。やめない、やめてやらない、やめれるわけない。 そんな顔で言われたってやめれるわけないのに従順ながかわいい。

「嘘。やめません。」

先端を口に含み舌で転がすと、電流が走ったようには体をのけ反らせてあられもない声を出した。 胸を揉んでいた手をスカートの中に入れ、寒い時期だというのにしっとりと 汗をかいた柔らかい太ももを撫で上げながら胸を吸うと、甘やかな声が響く。 は自分の胸元に顔をうずめる白布が見え、場所も場所だし羞恥心と背徳感でいっぱいになる 。足の間にはどうしようもない切なさが熱を持っていて身をよじるしかなかった。 しかし、白布が下着ごしに指を押し当てたとき今度は本当に焦ったように声をあげた。

「…だ、だめ、」

わかっている。わかっていた。今日はだめだってことを。ゆるりと下腹部を撫で顔を上げると、 が荒々しく呼吸をしながら不安気に瞳を揺らして、 それでも物足りなさそうな顔で見つめていた。

「わかってます。すみません。」

体を起こして乱してしまった制服を整え始めると、が泣きそうな顔でそれを制止した。

「…怒ってる?」
「怒ってないですよ。」

本当のことなのに、なかなか信じられないのか不安の色は消えない。 そんなことで怒るわけない。どちらかというと怒られて仕方ないのは自分の方なのに、と思う。

「残念だなとは思ってます、けど…」

そう言えば少し安心したような顔をして、服の裾を掴みながら白布の胸元に顔をこすりつけた。 さっきまで普通に体育の授業に出ていたので汚れてやしないか心配だったが、 が少し震えながら「すき、すき」と言うので、 いたたまれない気持ちになり背中に手を回してぎゅっと抱きしめる。

「俺も好きですよ。体の調子悪いのにすみませんでした。」

ふるふると首を振るの乱れてしまった髪を整えて優しく触れるだけのキスをすると、ほんのり笑顔を見せた。

「すみません、俺、もう行かないと。」

時計を見ると授業の終わる10分前だった。

「…足は大丈夫?」
「自分でもできるんで、次の休み時間にでも巻きます。」

名残惜しそうに絡み合った指をほどいて距離をとるとは寂しそうな顔で笑っていた。

「また部活で。」
「うん。」

ひらひらと手を振るを背にカーテンを閉めて保健室を出る。自分に残るの熱が切ない。との初めてはもっとちゃんと大切にしたいと思っていたのに、 どうしていつも止められなくなってしまうのか。 コントロールできない張り裂けそうな気持ちの身の置き所を探して、 空を見上げるとしんしんと雪が降り始めていた。 それでも、向こうの方の雲の切れ端から青空がのぞいていて、 どうしようもない気持ちの終着点があそこだったらいいのに思いながら校庭を突っ切った。






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