ッピーエンドにあこがれて
(そしていつかは!なんて馬鹿げてる)
ハッピーエンドなんてありえないと言ったことがあった。 そこにいた部下のは、どうしてそう思うんですか、何故ですかとうるさく聞いてくるもんだから 「、手を動かせ。」と低い声でささやくと途端に黙り込んで、黙々と作業を続けた。 ぼそりと呟いた「私はそうは思いません。」という言葉は無視しておいた。

後日、は俺の姿を見る度に何か言いたそうに口を開きかけてはやめてを繰り返すので、 鬱陶しくなって「用があるならさっさと言え」と言うと困ったような顔をして、 「怒らないで聞いてくださいよ。」と俺の機嫌を伺うようにぽつぽつと話しだした。 「サソリさんはハッピーエンドなんてありえないって言いましたけど私はあると思うんです。 信じないとあるものもなくなってしまいますよ。 私、誰よりもハッピーエンドを望んでいるのは本当はサソリさんだと思って… だからありえるって事、私が教えてあげたいんです。」
とよくもまあこんな馬鹿げた事が言えたもんだ。なんて生意気な。ガキのくせして。

「…どうやって?あいにく俺は傀儡人形だ。ハッピーエンドはもとより終わりさえないだろう。」そう嘲笑してみせた。
「本当に永遠なんてあるとお思いですか!?」 声を荒げては俺に訴えたが、さすがにこれは頭にきてばんっとを壁に押さえつけた。 細くて白い手首、力任せに握れば折れてしまいそうだし、そんな潤んだ目で睨みつけられても逆効果だ。 こんな体でハッピーエンドを教えてやるだと?ホラ吹きも大概にしてほしい。
「ほら、教えてくれんだろ?」
ギリギリまで顔を近づけると左側から手のひらが飛んできて、ぱしりと頬に鈍い痛みを感じた。(感覚なんてないはずだが)
それが殴られたということを認識させるのに一秒とかからず、すぐさま強引に唇をあわせた。怒りまかせといっても過言じゃない。 感情的になりすぎた。の目からはぽろぽろと我慢しきれなかった涙が零れ落ちてそれが俺に罪悪感を感じさせた。 ああ、した行動がキスだったとかそういうのが問題ではない。相手が部下だったことが問題なのだ。 嫌でも顔を合わせなければならない。それに今までの関係でいたかった。あの居心地のいい場所を壊してしまったのはきっと俺だ。
「…私、サソリさんのこと…好きなんです…」
しゃくりあげながら一生懸命に自分の気持ちを打ち明けるを愛しいと思いながらも妬ましく感じた。
ああ、そうだ!俺ものことが好きだ!でもこんな体じゃ何もしてやれない。俺は傀儡でお前は人間だ。
ほらみろ、ハッピーエンドなんてありえないじゃないか!

戻りたい戻りたい戻れない
俺だってお前を抱きしめたいと思うし幸せにしてやりたいんだ