※R18の描写があります
自己責任でお読みください















あんなに心細かったこの場所も、どうして2人でいるとこうも気が大きくなってしまうのだろうか。がらんと寂しい体育館に響くのは互いの足音と花束のラッピングの擦れる音。掴まれた腕は、制服越しでも火傷しそうな程に熱い。
押し込まれた体育倉庫は少し埃っぽくてうす暗く、跳び箱、マット、カゴに入ったボールやらが整理整頓されているわけでもない。小さな鉄格子の窓からは申し訳程度に太陽の光が差し込んでいた。カチャリと鍵が閉められて、今から何をするか分からないほどはウブな女じゃなかった。

「けんじろ…」

振り向きざまに顎を持ち上げられ、かわしきれない体勢のまま噛みつかれる。痛みを感じたのも束の間それはだんだんと啄ばむように挟まれ、続きを発することが許されなかった隙間にするりと舌がねじ込まれた。角度を変えながら口内を這うとすぐに湿っぽい空気が吐き出され、それがお互いを昂らせた。もっと隙間を埋めようと白布はの腰を引き寄せたが2人の間でカサリと音を立てたのはに贈った花束で、無遠慮にそれを掴みその辺に置いてあった長机へ放り出し白いブレザーを脱ごうと口を離すと、はおもちゃを取り上げられた子どものような顔で白布を見上げた。

「花が…」
「そんなのいいから、」
「そんなのじゃないもん。」

そう言ってがむっとした顔をしたので、白布は焦った。にとっては唯一無二の花束だったのだから仕方がないのはわかる。

「そういうつもりじゃ……ごめん、俺、今、余裕ない…」

今度はこちらが叱られた子どものような顔をする番になってしまった。はしゅんと項を垂らした白布の様子を見て「ふふっ」と笑った。

「わかってる。ごめん、意地悪しちゃった。」

白布は顔をあげ、じとりと恨めしそうにを見つめたあと、わざとらしく息を吐いて綺麗に結ばれていたネクタイに指をかけ緩めた。

「……覚悟しろよ……」

そこからはいとも簡単に主導権は白布の方へわたり、の身体は持ち上げられ跳び箱の上に縫いつけられた。昨日自分でアイロンをかけたスカートのプリーツがくしゃくしゃになる音を聞いたは、それだけで足のあいだに熱をもってしまった。白布はの唇を貪るようにキスをしながら、器用に制服のブラウスのボタンを外していく。またたくあいだに、狭い倉庫内の湿度が上昇し、濡れた音が反響する。白布は舌を絡ませながら、指での耳の裏をなぞり頰をなぞり、首すじ、鎖骨へと滑らかに這わせていった。は今まで会えなかった分たくさん触ってほしいのに、焦らしているのかと思うくらい首から下は触ってこないので、抗議するように白布の背中にしがみついた。これが、彼の言う覚悟だとしたらつらすぎる。

「……っ…ふ……け、ん…じろ……」

息つぎの隙間から彼の名前を呼べば、唾液の糸を光らせながら唇を離し意地悪く笑う。

「なに?」
「……ひゃ……っ…」

今度はその熱い唇が耳たぶに触れ、ねっとりと耳を舐めるので、背中がぞくぞくしては我慢できずに思わず声を上げた。もっとさわってほしいのに。

「……ね…っ…?」

まだ何もはじまっていないのにこれじゃあ先が思いやられる。懇願の目を向けたって、彼は耳たぶを弄びながら見下ろすだけなのだから。

「どうしてほしいのか言って。そのとおりにしてやるから。」

余裕がないとか嘘なんじゃないかと思うくらい楽しそうに鎖骨を撫でる。時折首すじにキスを落としながら耳に息を吹きかけるので、は段々自分に溜まっていく熱の逃げ場所を探して身をよじった。

「……意地悪…しないで……」
「そっちが先にしたくせに。」

ほら、はやくと耳元で優しく囁いて煽るのでは涙目になる。わたしが今からしようとしてることはいやらしい、そう思うと羞恥心で顔が赤くなる。もどかしいのと恥ずかしいのがごちゃまぜになり片手で自分の顔を覆いながら、もう片方の手はおもむろに白布の手を掴み自分の胸のふくらみにもっていった。こんなこと、言ったことないのに。

「……もっと…、さわって…」

白布がを覗き込めば涙を携え顔を真っ赤にして自分を見上げていた。完璧な上目遣いで。ほら、そんな顔したらやめられなくなるって前も言っただろ。

「あーあ、焦らしてやろうかと思ったけど、もう無理。」

白布はこれじゃあどっちが主導権握ってるか分からないなと思いながら、唇を隠していたか細い腕を掴んで口内に舌を差し入れ、もう片方の手でブラウスを引きずり出しての背骨をじかになでてやるとびくりと肩を震わせた。期待するかのように絡んできたの舌がいつになく積極的で白布のたがを一つずつ外していく。
下着をずらしてのふくらみを揉みしだくと全身が粟立ち、先端をはじくともっと、と言うように背中を仰け反らせるので、口に含んで舌で転がすと、甘い痺れがの体を駆け巡り、塞がれているものがなくなった口からは切ない声がもれた。普段あまり声を出さないがずいぶんとかわいい声で啼いたものだから白布は下半身に熱が溜まっていくのを感じた。は足のあいだから溢れてくる切ない気持ちをどうにかしようとすると腰が動いてしまうのが恥ずかしくて、胸を愛撫する白布の後頭部を抱え込み荒い呼吸を繰り返す。そんなの自分を求める熱にあてられて白布は頭がクラクラするような気がした。
しわくちゃになったスカートの中に手を入れ柔らかい太ももを堪能して下着越しに割れ目をなぞるとはびくりと震えひときわ高い声を出した。

「やぁ……っ……」
「嫌なんだ?」

そう言って手の動きをとめ顔を覗き込むと目のふちに涙を溜めたがふるふると首をふる。

「……ちがっ……」
「じゃあどうしてほしいの?」

やめないで、声にならずに唇が震える。白布は赤くてらてら光る唇に吸いついて無遠慮に下着をずり落とすとびしょ濡れになったそこに指を咥えさせた。あけすけな水音を響かせながら余裕なさげに内壁を擦られ、はますます声が出るのを抑えられなくなった。自分の指をきゅうきゅうと締めつけるその感覚に白布はもう焦らしたい気持ちよりも、ずいぶん前から限界な自分自身をおさめたくてたまらなかったが、どうしてもが自分を求める声が聞きたかった。

「早く言って、俺、限界だから。」

与えられる気持ちよさともどかしさの中で、切なげなその表情が置いていかないでと言った彼の叫びのような気がしては愛おしさで頭がいっぱいになった。

「……っけ、ん…じろ…が……ほしっ…」

白布はその言葉を聞くと、いい子いい子するように頭を撫で、ご褒美と言わんばかりの優しいキスを落とした。が、優しいのはキスだけで透き通るような綺麗な目は支配欲のようなもので光っていた。

、後ろ向いて。」

乱暴にの両腕を掴み、上体を起こさせ体を反転させると、ベルトのカチャカチャ外れる音が聞こえた。これから与えられるものへの期待と顔の見えない不安がを戸惑わせた。

「ね、けんじろ、…っ、あ……」

言い終わるよりも早く白布は自身をの中に滑りこませた。ぐずぐずだったそこはいとも容易く奥へと導いていく。
口ではあんなこと言ったってどうしても埋められないたった1年の差を、今日だけはこの背中をめちゃくちゃに踏み荒らす背徳感で埋めてしまいたかった。
首すじに歯を立てながら、後ろから胸のふくらみを持ち上げ、先端を摘みあげるといっそう甘やかな声をあげながらびくびくと反応するを見て、さらに腰を深く動かす。顎を掴んで無理やり後ろを向かせ、甘い声をあげる唇に舌を這わせるとそれに応えるかのように赤い舌が見え隠れし、密着しきれない口からはどちらのものかわからない唾液が垂れていて、それが2人をこの行為に溺れさせた。

「……んぁ、…あっ、…あ……」
「…、もっとお尻あげて…」

には繋がった2人の伸びた影が見え、みだらに動くその姿がけものみたいだと思った。それにくわえて、普段クセだからと言ってやめてくれない敬語がこの行為の最中はタメ口なのも、名前を呼び捨てにされるのも、全部がを興奮させて顔の見えない不安と一緒くたになり足のあいだからとろりと流れ出た。何度も何度も腰を揺すられて、立ってられないくらい足が震える。普段と違うからか、久しぶりだからか、あるいはその両方なのかもしれないが、いつもより早くの中がひくりと波打ちはじめたので、白布は名残惜しくもずるりと引き抜いた。

「……な、……っん…でぇ……」

涙を光らせながら振り向くをもう一度跳び箱の上に仰向けに寝かせ上気した頬を撫でる。

「最後はちゃんと顔見たい。」

とびきりの優しい笑顔で自分を愛おしそうに見つめる白布の姿には幸福感でいっぱいになり涙が流れていくのをとめられなかった。出ていってしまってさみしかったそこに、また与えられて、寄せては返す波のように襲ってくる気持ちよさに意識がぼうっとしてくる。白布はそんなの姿をみていると支配欲だとか焦燥感だとかすべて許されているような気がして、のびくりとひときわ強い締めつけを感じると薄い膜1枚隔てての中にぜんぶ吐きだした。







ふわふわと夢見心地の中、は髪を撫でられる感覚がして重いまぶたをゆっくり持ち上げると、目に飛び込んできたのは自分を大事そうに見つめる白布の姿だった。

「大丈夫ですか?」

まだ、ぼうっとする頭をフル回転させながら自分の足元をみるとシワになってしまったスカートが目に入り、先ほどまでの行為が鮮明に思い出されて一気に恥ずかしさが込み上げてきた。

「だ、大丈夫!」

同時にはっとする。どれくらいの間こうしてたのだろうか。

「いま何時?」
「今まだ12時半なんで、送別会まで30分ありますよ。」

はほっと胸を撫で下ろした。2人して遅れて行けばからかわれることは目に見えている。しかし、安心した途端寂しくなった。さっきまで、あんなに普通にタメ口だったのに。もう先輩じゃなくなってしまうのに。

「……敬語、まだやめないの?」

そう問えば、白布は口角をあげて意地悪く笑った。お見通しと言わんばかりの顔だ。まさか。

「感じてたくせに。」
「えっ!?」
「やめていいんですか?興奮してたでしょ?」
「えっ!?」

バレてるのも恥ずかしいし、そんなふうに言葉にされるのも恥ずかしくて何も言えなくなって両手で顔を覆った。絶対赤くなってる。そんな意地悪なところも好きだけど、でもわたしばかり翻弄されて悔しい。

「かわいかった。」

ふわりと唇が重なる。
この人は本当にずるいと思う。顔を隠した腕を強引に引きはがして、そんな言葉を紡ぎながら優しいキスするなんて。きゅんとするに決まってるじゃないか。

グーー

はぎょっとして、両手でお腹を押さえた。このタイミングで鳴る自分のお腹が恨めしい。ムードもへったくれもない。ちらりと白布の様子をうかがうと、一生懸命笑いをこらえている。

「お昼まだ食べてないですもんね。卒業祝いに何かおごりますよ。何がいいですか?」
「んーと……じゃあ肉まん!」
「色気がない。」
「色気がない女に興奮してたのどこの誰ですかー?」
「は?俺ですけど。」

は少しむっとして、さっきの仕返しに照れさせてやろうと思って言ってみたのに、何の効果もなく返ってきた答えはこれである。むしろケンカ腰な態度に頬をふくらませ、じとりと睨みあげる。

「そんな顔したって怖くないですか……ら………」

が白布の袖の裾を掴んで最後の語尾を攫うようにキスすると、綺麗な目がまんまると見開かれた。してやったりだよね、これは。わたしだってやるときはやるんだから。

「送別会終わったらもう1回部室でやるから。」
「え、」
「冗談です、半分は。」

軽く息を吐いて淡々と発された白布の一言にかぁっと顔があつくなる。半分ってどこからどこまでのこと言ってるんだろう。やっぱり翻弄されてしまうには変わりなかったようだ。悔しいけど。
赤くなったりむくれたりと忙しいを見て白布はくすりと笑いながら、「とりあえず」と腰をあげに手を差し出した。

「行きましょうか。皆待ってますよ。」
「うん。」

手を引かれて出た外の世界は目眩がするほどまぶしかった。
ねえ、けんじろう。あなたのおかげで今日の空がこんなに晴れやかだってこと、知ったんだよ。もうすぐ出会った季節がくるね。同じ学校で過ごせなくても、どうかこの手は離さないで。
ぎゅっと握ればぎゅっと握り返してくれる。きっとそれが答えだから、わたしは今日、この白鳥沢学園を卒業します。







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