んー!いい天気!青い空、白い雲・・・太陽は容赦なく紫外線ふりまいてるね! そうだ!どこか行こう!デイダラにでも鳥さんつくってもらって、んーと・・・海! 海に行こう!そうと決まったら今すぐ出発だ!! 部屋をドタバタと出てデイダラの部屋のドアノブに手をかけた瞬間、
「おい、こら、。てめぇ何してやがる。」
「ギャー!でたー!でなすった!!」
「でたっておまえ、俺がお化けでもあるまいし。」
ちょ、サソリさん、どうしてそんな強く肩つかんでるんですか。 急にぬっと現われないでよね!ほんとにお化けみたいだから!
「うるさいぞ、うん。、旦那。」
「デ、デイダラ!!あたしね、あんたにお願いがあってね、うん。と、とりさんを・・・」
「こら、ばかか。おまえは今から俺の傀儡の調整をするんだよ。分かってんのか。」
サ、サソリさん、首根っこつかまないで!く、くるしいじゃん!あほ、このおっさんめ!
「何か言いたそうな顔してんな、あぁ?」
「なななな何でもないです、はい。調整しましょーそうしましょー。」
ふざけてんのか、とかぶつぶつ言いながらサソリさんはあたしの首根っこつかんだまんま ずるずるひきずっていく。遠くでデイダラがご愁傷さまとか言って手を合わせてお祈りして るのが見えた。あんにゃろーめ!助けろ!薄情者!
サソリ’s ルームにぶち込まれたあたしは、(というか閉じ込められた?鍵みたいなの がちゃがちゃやってない?)たぶんきっと調整終わるまでここを出れないでしょうよ。 お外はあーんなに晴天だったのにこんな陰気な部屋に閉じ込められて・・・あたしってば 何かの童話のヒロインみたいじゃないか!えへ!とりあえず、この目の前にある傀儡を どうにかしなくては。
そう、あたしは誰がなんと言おうとサソリさんの部下なのです。今ではこうやって一人で 調整をまかせられたりもするけど、ちょっと前まではサソリさんはあたしのそばを一時も 離れることはなかった。どうやら大事なコレクションを壊されると思っていたようだ。 いや、ほんとに壊しかねなかったけども。でも、あたしを信用してくれるようになって嬉しい 反面寂しかったりもするのだ。だって、一緒にいたいじゃん!実はサソリさんのこと、す、す、 好きなんだもん・・・キャッ!サソリさんは傀儡の調整をあたしにまかせている間、別室で 何やら実験しているようだ。前に同じ部屋でも作業できるんじゃないかって聞いたことがあるけど、
「いや、おまえなんかと同じ部屋で作業してたらあほがうつる。」
とかなんとか言いやがった!なんて失礼なやつなんだ!そうこうしてるうちに結構時間がたって いたようで、サソリさんがドアを開けて入ってきた。手には何やらけったいな鍵をじゃらじゃら 持ってる。あたしを監禁してたんですね、サソリさん・・・そんなプレイも嬉しいです。・・・ とでも言うと思ったか!このう○こたれ!
「終わったか?」
「あ、あと少しです。」
ちょっと!何で今日そんな真剣にあたしの手元見つめてるんですか。き、緊張してしまうじゃない ですか。なんだか手に熱がじんじん伝わってきた。あ、サソリさんってば睫毛長い。
、上達したな。」
「えっ!?」
サ、サソリさんの口からそんな言葉が出るなんて。雨でも降る? 顔を上げるとサソリさんが、あの冷徹仮面のサソリさんがやわらかに微笑んでいたから、ほんとに、 ほんとに、地球が太陽系からふっとんでいくくらい驚いた。そんな顔見たことなかったから ドギマギしちゃうじゃないか。あたし今絶対顔赤い。
「まぁ、それも俺のおかげだが。」
「そそそそ、そうですね・・・・・・・つっ!」
いったーい!今、仕込みかなんかで手切ったよ。あ、毒・・・解毒しなくちゃ。それもこれも サソリさんが不意打ち笑顔見せるから、変にあたふたしちゃうんじゃない。いやいや、でもあの笑顔は 一生の宝物にします!心のアルバムにしまっておきます!
「サ、サソリさん、今手切っちゃって、あの・・・」
「はぁ・・・知ってる。見りゃ分かる。」
「おまえ、ほめた途端それだもんな。さっきのは取り消しだ。」
「えー!?」
「えーじゃねぇよ。ほら、早く手貸してみろ。」
痺れてきた手を震わせながら差し出すと、サソリさんは手際よく毒を抜き、止血して包帯を巻いてくれた。 今、サソリさんの手があたしに触れてる。相変わらず冷たい手。その手とは裏腹に、本当はやさしいこと あたしは知ってる。なんだか切なくなってきた。
「サソリさんの手、冷たいですね。」
「・・・そりゃな。」
「サソリさん、あたし、サソリさんが悲しい時、代わりに泣いてあげますね。」
「・・・どっからそんな話出てきた?」
「よく分からないですけど、でも、本気ですよ。」
「ふざけたこと言うな、ガキ。」
怒ったかな。ちょっとだけ目を動かして、目の前のサソリさんを盗み見すると、眉尻を下げて困ったように 笑っていた。今日のサソリさんは何だかおかしい。そんな表情も見たことないです。 そしてあたしの心臓は踊りまくりです。
「ほらよ、終わったぜ。」
包帯を巻き終わったサソリさんは、傷口をばしっと叩いて、にやりとした。 い、いたい!ばか!涙目でにらむと何やら嬉しそうだ。このドSめっ! でもいとしいです。サソリさんの触れた手、巻いてくれた包帯、すべてがいとしい。
「さて、一仕事終わったとこだし、久々どこか行くか?」
「えっ!?本気ですか?」
ほんと今日のサソリさんどうしたんだろ。なんか変な物食べた?出かけたあと雨が降ったりするのもいやよ? めをぱちぱちしていると、(口もあいてたかも!)
「あほ面すんな、。あほがもっとあほに見える。行くのか、行かないのか。」
「い、行きますよ、行きますとも!」
そう返事することが分かっていたようにサソリさんはすでに部屋のドアを開けて出ていってしまった。
「待ってくださいってばー!」
玄関に駆けていくと、外からの風がふわりと入ってきて、サソリさんの赤いきれいな髪がゆれた。



どうぞあたしの心臓をつかまえて